九州大学 将棋部

九大将棋部員の備忘録

王座戦の振り返り(久保翔)

九州大学将棋部4年の久保翔太郎と申します。この度、学生王座戦の振り返りを投稿いたします。ここでは1回戦と9回戦の対局を振り返ります。私にとっては2年ぶり2回目の全国大会でした。王座戦出場に際しまして緊張が高まるなか、後輩から「あれこれ考えすぎないで」と声をかけてもらったおかげで、全局落ち着いて指せました。


1回戦 早稲田大学戦 井上氏

私の先手中飛車穴熊、後手の超速二枚銀でした。相手が強いことは明らかなので、序中盤でしっかりついていくことを意識して指していました。△7三桂を跳ねるまで、端で▲9八香~▲9七香の手待ちをしていましたが、手詰まり模様でした。△3三角を見て、端から動きました。その後も中央でねじりあいが続きました。ここまで、あまり一本道の変化にならないように気を付けてました。 そして迎えた下図では、角銀交換+玉頭攻めが見え、先手悪くないと思いました。

この局面から▲3五歩△同歩▲5七金としたのが、私なりの攻めの組み立てでした。とにかく右辺に駒を集めるのが好きです。 ここから2筋方面にお互いに駒を集めて次の図です。

△2六歩と指されました。ここが勝負所と感じました。もし▲2六同歩なら△2七歩でもう手番は戻ってこないはずです。さらに△2二歩もありそうです。したがって△2六歩に▲2四金と勝負しました。実戦は▲2四金以下△2七歩成▲2三角・・・縦の攻め合いになりました。

△5二玉と指され、左辺に逃げられそうです。△2八歩が来る前に寄せきりたい場面です。感想戦でもこの局面が中心になりました。ここが私の最後のチャンスだったようです。実戦は△5二玉以下▲7一角△7二金▲9六桂△7四飛▲8四金とすすみ、後手勝ちがはっきりしました。対局中の私は▲9六桂を指したくなってしまい、本譜に進みました。これ以降、後手からの攻めはどれも厳しく、最後はきれいに詰まされました。もしかしたら中盤から少しずつ後手が良くなっていたのかもしれません。感想戦で教わったのは終盤▲7一角に替えて▲7二金でした。目が覚めました。▲4三角以下の詰めろですが、これに対局中は気づけず指せませんでした。厳密には後手が勝ちそうな展開ではありますが、もうひと勝負できたような気がします。敗戦ですが、精いっぱい指せた対局でした。


9回戦 大阪大学戦 髙野氏

私の大学将棋の最後の一局になります。今大会9回目の穴熊です。 戦型は私の先手中飛車穴熊、後手超速+左美濃です。銀対抗にして、右四間から一歩交換しました。5一から転換した△8四角は遠く▲3九金を狙っているため、切られる筋が常に気になってました。

△6五銀▲5七銀△4五桂に▲7七桂と跳ねて上の図です。 後手の攻めをどのように切り返すか、この辺りのやり取りで私は持ち時間をほぼ使い切りました。ここから△5七桂成以下、一気に局面が進みました。 3九の金も取り合って、図を迎えました。お互いに引けなかったと思います。

中央での駒交換の後▲1四桂を打ち、この局面で秒読みに入りました。最後に思いきり指して終わろうと決め、どうすれば▲1四桂を実現できるか考えていました。本譜は▲7三桂成で挟撃ができるので踏み込みました。なんといっても先手玉がZですね。▲1四桂以下、△3一玉▲6三成桂△3三銀▲2五桂△1四香▲1二金・・・なるべく清算しない攻めを意識しました。

最後は▲1二飛の王手に△3一玉、そして▲2四角と桂馬を取って終局となりました。 △2四同歩には▲2三桂△同銀▲2一金以下の詰みを見ています。 最終盤のときは、何度も色々な手をずっと考えていました。 この対局は中盤が難解で、分岐がたくさんありました。その中で自分の好きな展開に持って行けたのが良かったです。 この一局が終わって、勝った嬉しさと、自分の大学将棋が終わる寂しさがあり、不思議な感じでした。


最後に

王座戦ではどの対局ものびのびと指せました。9局送りだしてくれた山口君、久保幸君、そして部員の皆さん、ありがとうございました。皆さんがいてくれて心強かったし、なにより楽しかったです。


学部4年 久保翔太郎